土と

金継ぎした器は食器に使える?本漆と合成樹脂の違いと確認方法

情報の確認日 2026年9月15日編集部

金継ぎは、割れや欠けを漆で接着し、金などの金属粉で仕上げる修理技法です[2]。食器に使えるかは、使った材料と工房の案内で判断します。今回確認した3件の工房・解説は、修理した器に電子レンジと食洗機を使わないよう案内しています[2][5][6]

本漆の金継ぎと合成樹脂を使う修理の違い(2026年9月15日に修理工房・材料販売者・官公庁の公式ページで確認)
確認項目本漆の金継ぎ合成樹脂を使う修理(簡易金継ぎなど)根拠
接着・充填の材料麦漆(水・小麦粉・漆)、錆(水・砥の粉・漆)エポキシ樹脂など。仕上げ塗料に新うるし(カシューナッツの殻から抽出)を使う例もある[3][5][7]
仕上げ漆の上に金・銀・プラチナなどの金属粉を蒔く錫や真鍮を使う例、仕上げだけ本漆にする例がある[2][5][4]
修理期間の例約3か月(鹿田喜造漆店)エポキシと本漆仕上げの併用で、ひび・欠けが1か月前後(とべとべくさ)[3][4]
食器としての使用食器として使う前提で修理する工房がある材料が食品衛生法の規格に適合しているかを材料ごとに確認[2][8][9]
電子レンジ使わない使わない(TABITOTEは修理した器に不可と案内)[2][5][6]
食洗機使わない使わない(修理箇所がはがれやすくなる)[2][5][6]
作業するときの注意漆に触れるとかぶれることがある未確認(材料ごとの説明書で確認)[10]

このページで確認できること

  • 金継ぎの意味と、本漆・合成樹脂を使う修理の材料の違い
  • 金継ぎした器を食器・電子レンジ・食洗機で使うときの条件
  • 修理工房4件の材料・期間・料金・受付方法と、依頼前に確認する項目

金継ぎとは?漆で接着し、金属粉で仕上げる修理

割れや欠け、ひびが入った器を漆で接着・補修し、継ぎ目に金や銀などの金属粉を蒔いて仕上げる日本の修理技法です。金繕いとも呼ばれます[2]

漆造形にし山は、本漆金継ぎを、陶磁器やガラス器、漆器の割れや欠けを本漆で接着し、漆芸の技法で復元したあとに蒔絵の技法で金や銀、プラチナなどの粉を蒔いて化粧する技と説明しています[2]

漆について農林水産省の広報誌は、一度硬化すると溶かす溶剤がないほど強い接着力をもち、耐熱性や耐酸性にも優れると紹介しています[1]。文化庁の方針で、2018年度から国宝・重要文化財建造物の保存修理には原則として国産漆を使うことになったとしています[1]

同じ記事によると、日本で流通する漆の約91%は外国産で、国産の漆の約82%は岩手県北部で生産されています(2021年実績)[1]。修理に使う漆の産地は、工房によって違う可能性があり、今回確認した工房のページには記載がありませんでした。

本漆の金継ぎと、合成樹脂を使う簡易金継ぎの違いは?

接着や充填に天然の漆を使うか、エポキシ樹脂などの合成樹脂を使うかの違いです。仕上げだけ本漆にする工房もあり、材料の組み合わせは工房ごとに確認します[3][4][5]

材料:麦漆・錆か、エポキシ樹脂か

鹿田喜造漆店は、水・小麦粉・漆を練った接着剤「ムギ漆」と、水・砥之粉・漆を練ったパテ「錆び」を使うとしています[3]。いずれも天然素材100%だと説明しています[3]

TABITOTEは、本漆の修理では天然漆と純金粉、簡易金継ぎではエポキシ樹脂と錫や真鍮を使うとしています[5]。金継ぎ工房 とべとべくさは、接着や欠けを埋めるパテに食品衛生法に適合したエポキシを使い、仕上げの化粧には本漆を使うとしています[4]

「新うるし」は漆ではない

金継ぎ暮らしは、簡易金継ぎで使われる「新うるし」はカシューナッツの殻から抽出したもので、漆の木の樹液である本漆とは別のものだと説明しています[7]。本漆に似せた塗料を「合成うるし」と呼ぶとしています[7]

工房の説明に「うるし」とあっても、本漆か合成うるしかは言葉だけでは分かりません。依頼する前に、接着・充填・仕上げのそれぞれに何を使うかを工房に確認します。

期間と料金:工程の多い本漆は時間がかかる

鹿田喜造漆店は、修理期間を約3か月とし、接着後に約1か月寝かせることを理由の一つに挙げています[3]。料金は、3mm角以内の欠けで2,400〜3,000円、割れで5,850〜13,500円と示しています[3]

漆造形にし山は、各工程に1日〜2週間を要するため全体で相当な期間が必要とし、最低価格を5,000円(送料別)としています[2]。とべとべくさは、ひびと欠けで1か月前後、割れで3週間〜2か月としています[4]

金継ぎした器は食器として使える?

食器として使える前提で修理する工房はあります。ただし材料と工房の案内で条件が違い、合成樹脂を使う場合は食品衛生法の規格への適合を材料ごとに確認します[2][4][9]

漆造形にし山は、本漆のみを使い合成接着剤や合成漆は使わないとし、天然素材だけで修復した器は口に触れる食器に最善だと説明しています[2]。これは同工房の見解で、他の工房の修理にそのまま当てはまるものではありません。

とべとべくさは、修理後は食器として安全に使えるとしつつ、使うことで劣化し、数年から数十年もつと説明しています[4]。TABITOTEも、修理した器は基本的に問題なく使えるとしています[5]

消費者庁によると、2025年6月1日から適用されている食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度は、政令で定める材質を合成樹脂としています[9]。合成樹脂を使う場合は、リストに規格が定められた物質だけが使えます[9]

金継ぎ暮らしは、自社の簡易金継ぎキットの材料がすべて「食品衛生法370号適合」かつポジティブリスト制度に適合していると表示しています[8]。同社は、市販の道具のほとんどは食器に使えないとも書いています[7]。合成樹脂の修理材は、製品ごとの適合表示を確認します。

金継ぎした器は電子レンジ・食洗機・オーブンで使える?

今回確認した3件の工房・解説は、いずれも使わないよう案内しています。金属粉があるため電子レンジは使えず、食洗機では修理箇所がはがれやすくなると説明されています[5][6]

金継ぎ図書館(鳩屋)は、金継ぎで修理した器は漆器と同じ扱いとし、電子レンジ、食器洗い乾燥機、オーブンは使えず、直火も避けるよう案内しています[6]。漆造形にし山も、電子レンジ、オーブン、食器洗浄機の使用を避けるよう書いています[2]

TABITOTEは、金属粉を含むため電子レンジは使えず、食洗機は修理箇所がはがれやすくなるとしています[5]。パナソニックは、金箔や銀箔のついた食器が電子レンジで火花の原因になると説明しています[12]

食洗機について、パナソニックは高級漆器を洗えないものに挙げ、漆器は急な温度や湿度の変化に弱いため食洗機は向かないとしています[11]。とべとべくさと鹿田喜造漆店の修理後の電子レンジ・食洗機の扱いは、確認したページに記載がありませんでした。

金継ぎした器を洗うとき・しまうときに避けることは?

金継ぎ図書館(鳩屋)は、研磨剤やたわしを使わない、長時間水につけない、他の陶器と直接触れさせないことなどを挙げています[6]

鳩屋は、研磨剤やタワシの使用を避け、金属製のナイフやフォークも使わないよう案内しています[6]。水につけたまま、または水分のあるものを入れたまま長く置かないようにとしています[6]

しまうときは、他の陶器と直接触れないよう間に紙を挟み、冷蔵庫での保管は避けるとしています[6]。TABITOTEは、柔らかいスポンジで手洗いするよう案内しています[5]

金継ぎの依頼先はどう探す?工房に確認する項目

材料(本漆か合成樹脂か)、修理後の使い方の案内、期間、料金、送付か持ち込みかを、工房の公式ページで確認します。下の表は、これらを公式サイトで公開している4つの工房です。

表に載せたのは、材料と受付方法を公式サイトで公開している工房です。金額と期間は2026年9月15日に確認した掲載例で、器や破損の状態によって変わる場合があります。

依頼するときは、器の素材(陶磁器・ガラス・漆器など)、破損の場所と大きさ、食器として使いたいかを伝えます。漆造形にし山は、見積の際に素材とサイズ、破損箇所の寸法、写真、希望の仕上げを求めています[2]

修理後に食器として使う予定がある場合は、材料の食品衛生法への適合、電子レンジ・食洗機の可否、使い始めてよい時期を工房に確認します。使い始めてよい時期は、今回確認した工房のページでは未確認です。

公式サイトで材料・条件を確認した金継ぎの修理工房(4件、2026年9月15日確認)
工房材料期間の例料金の例受付方法修理後の案内根拠
漆造形にし山本漆のみ(合成接着剤・合成漆は使わない)工程ごとに1日〜2週間(全体では相当な期間)最低5,000円(送料別)メールフォームで無料見積(写真・寸法などを送る)電子レンジ・オーブン・食洗機は避ける[2]
鹿田喜造漆店(京都)本漆(ムギ漆・錆び)約3か月欠け(3mm角以内)2,400〜3,000円、割れ5,850〜13,500円送付または持ち込み確認したページに記載なし[3]
金継ぎ工房 とべとべくさ接着・パテは食品衛生法適合のエポキシ、化粧は本漆ひび・欠け1か月前後、割れ3週間〜2か月ひび3,500円〜、欠け4,500円〜(税別)電話・メールで問い合わせ、店舗へ持ち込み(発送は推奨していない)食器として使えるが、使用で劣化する[4]
TABITOTE本漆(天然漆・純金粉)と簡易金継ぎ(エポキシ樹脂・錫や真鍮)確認したページに記載なし見積フォームで相談宅配で全国対応電子レンジ・食洗機は不可、柔らかいスポンジで手洗い[5]

自分で金継ぎをする場合に確認することは?

漆を使う場合はかぶれへの備え、合成樹脂のキットを使う場合は食品衛生法の規格に適合した材料かどうかを確認します。手順は材料の説明書に従います[8][10]

金継ぎ工芸会は、漆かぶれは漆液が皮膚に付いて起こる炎症で、原因は主成分のウルシオールだと説明しています[10]。付いてから数時間〜1週間ほどの潜伏期のあと、かゆみを伴う小さな水疱ができるとしています[10]

予防として、ゴム手袋やアームカバーで漆に直接触れないこと、付いたらこまめに油で拭き取ること、作業後は手や腕を油で拭いて石鹸で洗うことを挙げています[10]

合成樹脂のキットを食器の修理に使う場合は、材料が食品衛生法の規格やポジティブリスト制度に適合していると表示されているかを確認します[8][9]。表示がない材料を食器に使ってよいかは、未確認として扱います。

よくある質問

簡易金継ぎなら電子レンジや食洗機で使える?
今回確認した工房では、TABITOTEが修理した器の電子レンジと食洗機を不可としています[5]。簡易金継ぎを電子レンジ・食洗機可とする工房の公式な案内は、今回は確認していません。修理を頼んだ工房の案内に従います。
金継ぎの修理にはどのくらいかかる?
鹿田喜造漆店は約3か月[3]、とべとべくさはひび・欠けで1か月前後[4]としています。漆造形にし山は、本漆の各工程に1日〜2週間かかるため全体で相当な期間が必要としています[2]
金継ぎした器で漆かぶれは起きない?
金継ぎ工芸会は、漆液が皮膚に付いたときのかぶれと予防を説明しています[10]。修理が終わった器に触れてかぶれるかどうかを明記した資料は、今回確認した中にはなく未確認です。
接着剤で直した器とは何が違う?
とべとべくさのように、接着に食品衛生法適合のエポキシを使い、仕上げに本漆を使う修理もあります[4]。合成樹脂の接着剤で直した器を食器に使えるかは、材料の適合表示で確認します[9]

出典

  1. 1
    「漆」の世界農林水産省(aff 2022年11月号)・2026年9月15日確認
  2. 2
    本漆金継ぎについて漆造形にし山・2026年9月15日確認
  3. 3
    金継ぎ修復について鹿田喜造漆店・2026年9月15日確認
  4. 4
    修理について金継ぎ工房 とべとべくさ・2026年9月15日確認
  5. 5
    金継ぎ修理 よくあるご質問TABITOTE・2026年9月15日確認
  6. 6
    金継ぎ修理をした器の取り扱い方金継ぎ図書館(鳩屋)・2026年9月15日確認
  7. 7
    新うるしを使った簡易金継ぎのやり方金継ぎ暮らし・2026年9月15日確認
  8. 8
  9. 9
  10. 10
    「漆かぶれ」について金継ぎ工芸会・2026年9月15日確認
  11. 11
  12. 12
    レンジから火花が出たときはパナソニック・2026年9月15日確認

確認できていないこと

  • 鹿田喜造漆店・とべとべくさの修理後の電子レンジ・食洗機の扱いは、確認したページに記載なし
  • 修理後に食器として使い始めてよい時期の工房の案内は未確認
  • 鹿田喜造漆店の料金が税込か税別かは未確認
  • 堤淺吉漆店の公式サイトは読み取りで内容を正しく読めず、根拠にしていない

記載は編集部が出典を確認して作成しています。誤りに気づいた場合は訂正のお知らせの窓口からお知らせください。