陶器の吸水とは|陶器・炻器・磁器の違いと使うときの注意
情報の確認日 2026年9月15日編集部
三重県工業研究所は、陶器を吸水性あり、炻器と磁器を吸水性なしと分類しています[1]。土岐市は、磁器の吸水率はほとんど0%で、陶器は10%近くになることもあると説明しています[2]。手元の器の吸水率の数値は、今回確認した作り手の案内には書かれておらず未確認です。
このページで確認できること
- 陶器・炻器・磁器の吸水性の違いと、公的資料にある吸水率の数値
- 吸水率の求め方と、吸水率が耐熱衝撃性や経年貫入に関わる理由
- 吸水する器を水に浸す・電子レンジにかける・乾かすときの作り手の注意
陶器・炻器・磁器で、吸水性はどう違う?
三重県工業研究所は、陶器は吸水性あり、炻器と磁器は吸水性なしと分類しています[1]。土岐市は、磁器の吸水率はほとんど0%、陶器は10%近いこともあるとしています[2]。
三重県工業研究所の窯業研究室は、やきものを陶器、炻器(せっき)、磁器、土器に分類できると説明しています[1]。このうち陶器・炻器・磁器は、吸水性、透光性、叩いたときの音の違いで分類できるとしています[1]。
同研究所は、磁器は透光性の有無で判定しやすい一方、陶器と炻器の区別は打音か吸水性で判断することになるとしています[1]。打音で判定しにくい場合も、吸水率の数値で判断できると説明しています[1]。
土岐市は、ガラス質になるほど素地が水を吸いにくくなると説明しています[2]。磁器は半分以上がガラス質になっているため光を通し、吸水率はほとんど0%で、陶器は10%近い吸水率を持つこともあるとしています[2]。
日本セラミックス協会の資料は、炻器を磁器と陶器の中間的な性質を持つ焼きもので、有色、不透明で、吸水性はほとんどないと説明しています[3]。炻器の吸水率の具体的な数値は、今回確認した資料には書かれていませんでした。
吸水率は、どうやって求める?
三重県工業研究所は、試料を水中で3時間以上煮沸して水を含ませた質量と、乾燥させた質量の差から求める式を示しています[1]。
三重県工業研究所によると、吸水率は(飽水試料の質量-乾燥試料の質量)を乾燥試料の質量で割り、水の比重で割って100を掛けて求めます[1]。飽水試料の質量は3時間以上煮沸した後の質量で、水の比重は室温以下では約1.00としています[1]。
同研究所の窯業研究室は、依頼試験として吸水率の測定を受け付けていると案内しています[1]。家庭で器を煮沸して重さを量っても、試料の作り方や条件が同じにならないため、研究所の数値とそのまま比べることはできません。
釉薬がかかった陶器も、水を吸う?
中川政七商店は、陶器は釉薬が掛かっていても吸い込むと説明しています[4]。三重県工業研究所は、貫入のない製品でも素地の吸水率が高いと、時間がたって貫入が生じることがあるとしています[1]。
中川政七商店は、陶器・半磁器・磁器を比べる表で、陶器の吸水性を「あり(釉薬が掛かっていても吸い込む)」、磁器を「ほとんどなし」としています[4]。陶器は目の粗い土でできており、釉薬がかかっていても完全に水を通さないわけではないと説明しています[4]。
中川政七商店は、貫入のある器は水分を吸収しやすくなっているとしています[4]。あらかじめ目止めをしたり、使う前に水につけたりすると、匂いつきや油染みを抑えられると案内しています[4]。
三重県工業研究所は、もともと貫入のない半磁器などの製品でも、素地の吸水率が高いと時間の経過とともに「経年貫入」が生じ、製品の欠点として扱われると説明しています[1]。経年貫入は、陶器の素地が水分を吸収して膨張する水和膨張によって起きるとしています[1]。
吸水率が高いと、器は割れやすい?
一概には言えません。三重県工業研究所は、耐熱陶器では素地に一定の吸水率があると気孔があり、耐熱衝撃性が高いといわれるとしています[1]。一方で吸水率の高い陶器は経年貫入が起きやすいとしています[1]。
三重県工業研究所は、土鍋などの耐熱陶器について、素地の吸水率が一定程度あれば、素地の中に開いた気孔がある程度存在すると考えられると説明しています[1]。一般に、急冷などの熱衝撃を受けたとき、素地の中に気孔があると耐熱衝撃性が高いといわれるとしています[1]。
反対に、耐熱陶器を高温で焼成して素地を焼き締めてしまうと、気孔が減って吸水率が低くなり、耐熱衝撃性も下がると考えられているとしています[1]。同研究所は、吸水率だけでは陶磁器の性能は評価しきれないとまとめています[1]。
吸水率の高い陶器は経年貫入が起きやすく、経年貫入を予知するには別に「き裂試験」が必要とも書いています[1]。吸水の多い・少ないだけで、手元の器の丈夫さを判断することはできません。
吸水する器を使うとき、作り手は何に注意するよう案内している?
水を含んだまま加熱しない、よく乾かしてからしまう、といった注意があります[5][7][4]。一方で、使う前に水にくぐらせる手順を勧める作り手もいて、水に浸すかどうかは製品で分かれます[5][7]。
耐熱陶器を作るカネセは、陶器は吸水性が高く、水分を含んだまま使うと破損の原因になる場合があるとして、水に浸すことを推奨していません[5]。水に浸した後にしっかり乾燥させれば、破損の心配はないとも書いています[5]。
陶房窯八は、焼き締めの器について、水分が浸透した状態で電子レンジにかけると、器が吸い込んだ水分が膨張して破損することがあるとしています[7]。一方で、油シミを防ぐために使う前に水かぬるま湯にさっとくぐらせることは勧めています[7]。
中川政七商店は、陶器は洗った後に完全に乾燥するまでしまえないとしています[4]。食洗機では、表面は乾いていても器本体に吸水された水分が残った状態で乾燥が終わるため、蒸れや湿気臭さ、カビが起きやすいとして勧めていません[4]。
明山は、蒸し鉢を、陶器の吸水性を利用して電子レンジで温めたときに器に含まれた水分から水蒸気を出す製品と説明しています[6]。吸水性を前提に、使う前に1分ほど水に浸すよう指定している製品もあります[6]。
器の底から水がにじむのは、吸水のせい?
明山は、信楽焼の土は荒土で吸水性があるため、花器や植木鉢の底部からまれに水分がにじみ出る場合があるとしています[6]。食器で水が漏れるかどうかは、作り手の検査や説明で確認します[7][8]。
明山は、花器と植木鉢について、信楽焼の土は荒土で吸水性があるため、ごくまれに底部から水分がにじみ出る場合があるとしています[6]。花器は使う前に水を入れて漏れがないか確かめるか、敷物を敷くよう勧めています[6]。
一方、陶房窯八は自窯の焼き締めの器について、高温で焼き締めているので水分がもれることはないとしています[7]。協同組合岡山県備前焼陶友会は、備前焼を一つずつ水漏れの検査をしていると案内しています[8]。吸水性がある素材でも、水が漏れるかどうかは製品によって違います。
よくある質問
- 陶器の吸水率は何%くらいですか?
- 土岐市は、陶器は10%近い吸水率を持つこともあると説明しています[2]。器ごとの数値は製品によって異なり、今回確認した作り手の案内には吸水率の数値は書かれていませんでした。
- 吸水する器は、使う前に水に浸したほうがいいですか?
- 作り手で分かれます。陶房窯八は使う前に水かぬるま湯にさっとくぐらせるよう勧め[7]、カネセは自社の耐熱陶器について水分を含んだまま使うと破損の原因になるとして水に浸すことを推奨していません[5]。
- 吸水する器に漂白剤は使えますか?
- 中川政七商店は、陶器は本体が吸い込んでしまうため漂白剤が使えないとしています[4]。漂白剤の可否は作り手で分かれるため、漂白剤のページで作り手ごとの案内を確認してください。
出典
- 1三重県工業研究所だより 第43号(令和8年4月)「陶磁器の吸水率について」三重県工業研究所 窯業研究室・2026年9月15日確認
- 2磁器と陶器の違いは|土岐市公式ウェブサイト土岐市・2026年9月15日確認
- 3食器(セラミックス 43(2008)No.12、2023年3月改定)日本セラミックス協会・2026年9月15日確認
- 4道具の特徴とお手入れ―焼き物編―|中川政七商店中川政七商店・2026年9月15日確認
- 5耐熱陶器のお手入れについて|株式会社カネセ株式会社カネセ・2026年9月15日確認
- 6取り扱い説明書|明山信楽焼 明山(明山窯)・2026年9月15日確認
- 7器のお手入れについて – 陶房窯八陶房窯八・2026年9月15日確認
- 8備前焼の使用方法協同組合岡山県備前焼陶友会・2026年9月15日確認
確認できていないこと
- 水に浸す扱いが、カネセ(耐熱陶器は推奨しない)と陶房窯八(使う前にさっとくぐらせる)で異なる。製品ごとの指定として並べた
- 土岐市の「10%近く」は陶器の吸水率の一例としての表記で、どの製品・試験条件での値かは記載がない
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